運転資金の借入額の目安は?いくら借りるべきか考える方法を解説

運転資金の借入額の目安は?いくら借りるべきか考える方法を解説

会社を経営する中で運転資金が不足しそうなとき、「いくら借りればいいのだろう」と悩むことがありますよね。

運転資金は金融機関から融資を受けて確保できますが、借入額は月商だけを基準に決められるものではありません。自社に必要な運転資金と手元資金を確認したうえで、今後の入出金や借入後の返済まで考える必要があります。

また、金融機関から借りられる金額と、事業を続けるために借りるべき金額が同じとは限りません。

この記事では、運転資金の借入額の目安と、自社に必要な借入額を考える方法を解説します。借入後の返済や、融資を検討するタイミングについても紹介します。

運転資金の借入額は必要な資金と返済できる金額から考える

運転資金は、金融機関から融資を受けることができます。

事業用の融資では、仕入代金や人件費、家賃、外注費など、事業を続けるために必要な支払いに充てる資金を「運転資金」として借りることができます。

たとえば、売上の入金より先に仕入れや給与などの支払いが発生する場合や、大口受注によって一時的に仕入れや外注費が増える場合には、運転資金の借入を検討することがあります。

ただし、運転資金としていくら借りるべきかは会社によって異なります。月商の数ヶ月分がひとつの目安として使われることはありますが、「月商○ヶ月分を借りればよい」と一律に決められるものではありません。

借入額を考えるときは、まず自社に必要な運転資金と現在の手元資金を確認します。

たとえば、事業を回すために1,000万円の運転資金が必要な会社で、事業に使える現預金が600万円ある場合、差額は400万円です。

必要な運転資金 1,000万円 − 手元資金 600万円 = 400万円

ただし、この400万円がそのまま借りるべき金額になるとは限りません。

数ヶ月後に納税や賞与などのまとまった支払いが予定されていれば、そのための資金も考えておく必要があります。採用や事業拡大を予定している場合には、今後必要になる支出も確認しておかなければなりません。

一方、必要以上に借りると、借入後の返済によって将来の資金繰りを圧迫する可能性があります。

そのため、運転資金の借入額は、主に次のような数字を確認しながら考えます。

確認する項目 確認する理由
必要な運転資金 現在の事業を回すために必要な金額を把握する
手元資金 自社の資金だけでどの程度賄えるか確認する
今後の入出金 納税や賞与、入金予定などを含めて資金不足を予測する
毎月の返済額 借入後も無理なく返済を続けられるか確認する
既存の借入 現在の返済負担も含めて判断する

つまり、「借りられる金額」と「借りるべき金額」は同じではありません。

金融機関からいくら借りられるかだけで考えるのではなく、事業に必要な資金を確保しながら、その後も返済を続けられる金額を考えることが大切です。

なお、自社に必要な運転資金がまだわからない場合は、「運転資金の目安は月商何ヶ月分?自社に必要な金額の考え方を解説」や「運転資金の計算方法とは?必要額の求め方と計算式をわかりやすく解説」から確認してみてください。

運転資金としていくら借りるかを計算してみよう

運転資金の借入額を考えるときは、必要な運転資金と手元資金の差額を確認したうえで、今後予定している入出金も含めて考えます。

たとえば、次のような会社を想定してみましょう。

項目 金額
必要な運転資金 1,000万円
現在の手元資金 600万円
3ヶ月後に予定している納税 200万円
3ヶ月間で見込まれる利益からの資金増加 100万円

まず、必要な運転資金と手元資金だけを比べると、400万円不足しています。

1,000万円 − 600万円 = 400万円

しかし、3ヶ月後には200万円の納税が予定されています。一方、今後3ヶ月間の事業によって100万円の資金増加を見込んでいるとします。

これらも含めて考えると、この例では500万円程度の資金を確保する必要があると考えられます。

400万円 + 200万円 − 100万円 = 500万円

このように、現在の不足額だけを見るのではなく、借入後の数ヶ月間にどのようなお金が入ってきて、どのような支払いが発生するのかまで確認することで、実際に必要な資金を考えやすくなります。

ただし、ここで算出した500万円が、そのまま適切な借入額になるわけではありません。

500万円を借りた場合には、元金に加えて利息を返済していく必要があります。希望する金額を借りられるかどうかも、会社の業績や財務状況、既存の借入、資金の使い道などによって異なります。

そのため、借入額を決めるときは「いくらあれば当面の資金が足りるか」だけでなく、その金額を借りたあとも無理なく返済を続けられるかまで確認する必要があります。

運転資金を借りるときは返済後の資金繰りも確認する

運転資金として必要な借入額が見えてきたら、その金額を借りたあとも返済を続けられるか確認しましょう。

融資を受けると一時的に手元の現金は増えますが、その後は毎月、元金と利息の返済が発生します。そのため、借入時点で必要な資金を確保できても、返済によって毎月の資金繰りが苦しくなれば、再び運転資金が不足する可能性があります。

借入額を考えるときは、現在の資金不足を解消できるかだけでなく、返済を始めたあとのお金の動きまで確認することが大切です。

毎月の返済額を確認する

融資を受けるときは、借入額だけでなく毎月いくら返済することになるのかを確認します。

たとえば500万円を借りる場合でも、返済期間によって毎月の返済額は変わります。返済期間を長くすれば毎月の負担は抑えやすくなりますが、その分、返済期間は長くなり、支払う利息の総額も増える可能性があります。

大切なのは、売上が計画どおりに推移しているときだけ返済できる金額ではなく、多少売上が変動しても事業を続けながら返済できるかを確認することです。

既存の借入がある場合は返済額を合算する

すでに融資を受けている会社が新たに運転資金を借りる場合は、新しい融資だけで返済負担を考えないようにします。

たとえば、既存の借入で毎月20万円を返済している会社が、新たな融資によって毎月10万円を返済することになれば、毎月の返済額は合計30万円になります。

既存借入の返済20万円 + 新たな借入の返済10万円 = 毎月30万円

新たな融資だけを見れば月10万円でも、会社全体では毎月30万円の現金が返済に充てられます。そのため、追加で借りる場合は現在の借入残高だけでなく、毎月いくら返済しているのかも確認しておきましょう。

また、既存の借入を返済している途中でも、売上の増加や大口受注などによって、さらに運転資金が必要になることがあります。返済中に追加で運転資金を借りる場合の考え方については「運転資金の追加融資は受けられる?返済中に追加で借りるときのポイントを解説」で詳しく解説しています。

売上が計画どおりにならない場合も考えておく

借入後の返済計画を考えるときは、予定している売上をそのまま前提にしないことも大切です。

新しい取引が予定より遅れたり、受注が減ったりすれば、想定していたほど現金が入ってこないこともあります。一方で、給与や家賃、借入金の返済などは、売上が減っても支払いが続きます。

そのため、「予定どおり売上が上がれば返せる」という状態ではなく、売上が想定を下回った場合にも、手元資金を大きく減らさず返済を続けられるか確認しておきましょう。

運転資金の借入では、今必要なお金を確保することと、借入後の資金繰りを維持することの両方を考えて借入額を決める必要があります。

運転資金は足りなくなる前に借入を検討する

運転資金の借入を検討するタイミングは、実際に支払いができなくなってからではありません。

現在は手元資金に余裕があっても、数ヶ月先の入出金を確認すると、資金が不足する時期が見えてくることがあります。そのため、運転資金を借りるかどうかは、現在の預金残高だけではなく、今後の資金繰りをもとに判断します。

たとえば、大口の仕事を受注すると売上は増えますが、入金より先に仕入れや外注費が発生することがあります。繁忙期に向けて在庫を増やす場合や、新しい社員を採用する場合も、売上につながる前に支払いが増える可能性があります。

こうした予定がある場合は、「今いくらあるか」だけではなく、数ヶ月先までのお金の動きを確認してみましょう。

今後の変化 運転資金への影響
大口の受注が決まった 入金より先に仕入れや外注費が増えることがある
繁忙期に向けて在庫を増やす 商品を販売して代金を回収するまで資金が在庫に変わる
新しい社員を採用する 売上が増える前から給与などの支払いが発生する
取引先の入金時期が遅くなる 売上を回収するまでの期間を手元資金でつなぐ必要がある

また、融資は申し込めばすぐに入金されるとは限りません。金融機関による審査があり、必要書類の準備や確認にも時間がかかります。

そのため、資金が足りなくなる直前ではなく、将来の資金不足が見えてきた段階で借入の必要性を検討することが大切です。

今後の売上や支払いを確認し、「○ヶ月後には手元資金がここまで減りそう」と予測できれば、必要な借入額や返済計画についても余裕を持って考えられます。

運転資金の借入は、足りなくなったお金を補うためだけのものではありません。事業を続けるために必要な資金を先に把握し、資金不足が起こる前に確保するという考え方も持っておきましょう。

運転資金の借入額は事業計画まで含めて決めよう

運転資金としていくら借りるべきかは、月商だけを基準に決められるものではありません。

まずは自社に必要な運転資金と現在の手元資金を確認し、今後予定している入金や支払いまで含めて、どのくらいの資金を確保しておきたいのかを考えます。

さらに、借入後は返済が続きます。現在の資金不足を解消できる金額であっても、毎月の返済によって資金繰りが苦しくなるのであれば、借入額や返済期間を見直す必要があります。

また、大口受注や採用、設備投資、事業拡大などを予定している場合には、これから必要になる資金も変わります。現在の不足額だけではなく、数ヶ月先にどのような事業を予定しているのか、そのためにどのくらいの資金が必要になるのかまで確認しておくことで、必要な借入額を考えやすくなります。

事業の予定と必要な資金を整理するときは、事業計画をあわせて確認してみましょう。事業計画の考え方については「事業計画書を書く前に考えることとは?実現できる経営計画を立てるポイントを解説」で詳しく解説しています。

「いくら借りられるか」ではなく、「事業にいくら必要で、返済しながら事業を続けられるか」という視点で借入額を考えることが大切です。

運転資金が不足する可能性がある場合は、実際に資金が足りなくなる前に今後の資金繰りを確認し、必要に応じて金融機関への相談を検討しましょう。