事業融資を検討している経営者の中には、金利上昇のニュースを見て「今は融資を受けない方がいいのでは」と考えている人もいるでしょう。
金利が上昇すれば、新たに受ける融資の利息負担が増えるだけでなく、変動金利で借りている場合は既存の融資にも影響する可能性があります。一方で、金利が高いことだけを理由に融資を避けると、手元資金が減ったり、必要な投資のタイミングを逃したりすることもあります。
この記事では、金利上昇が事業融資に与える影響や現在の金利相場を解説します。金利が上昇している今、事業融資をどのように考えればよいのか知りたい経営者は参考にしてください。
なお、運転資金の借入額については「運転資金の借入額の目安は?いくら借りるべきか考える方法を解説」も参考にしてみてください。
金利が上昇しても事業融資は「借りない方がいい」とは限らない
事業融資の金利は上昇しています。日本銀行は2026年9月時点で、政策金利の目安となる無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.0%程度で推移させる方針としています。2025年9月時点では0.5%程度だったため、1年間で金利を取り巻く環境は変化しています。
実際に、日本政策金融公庫の融資金利も変動しています。2026年9月1日時点では、国民生活事業で無担保融資を利用する場合、条件によって基準利率は年3%台後半からとなっています。
金利が上がれば、同じ金額を借りても支払う利息は増えます。そのため、「今は金利が高いから、融資を受けない方がいいのでは」と考える経営者もいるでしょう。
しかし、事業融資は金利の高低だけで判断するものではありません。
融資を受けずに手元の現金だけで設備投資や採用、新しい事業への投資を進めれば、その分だけ会社に残る現金は減ります。また、金利が下がるまで投資を待つことで、事業を成長させる機会を逃してしまう可能性もあります。
大切なのは「今の金利は高いから借りない」と判断することではなく、借入によって増える返済負担と、その資金を使うことで得られる効果の両方を見ることです。
金利が上昇している今だからこそ、「いくらで借りられるか」だけではなく、「何のために資金が必要なのか」「今、融資を受ける必要があるのか」まで含めて考える必要があります。
金利上昇は事業融資にどのような影響がある?
金利が上昇すると、新たに受ける融資の利息が増えるだけでなく、借入額や返済計画、会社全体の資金繰りにも影響します。また、すでに融資を受けている場合も、契約内容によっては返済負担が変わる可能性があります。
事業融資への影響を考えるときは、次の3つの視点から確認してみましょう。
- 新たな融資では借入額や返済計画の見直しが必要になる
- 変動金利では既存の借入にも影響する可能性がある
- 借入が多い会社ほど金利上昇の影響が積み重なりやすい
それぞれ詳しく解説します。
新たな融資では借入額や返済計画の見直しが必要になる
金利が上昇すると、新たに事業融資を受ける際の利息負担も増える可能性があります。
影響するのは、支払う利息の金額だけではありません。同じ金額を同じ期間で借りた場合でも、金利が高くなれば返済負担は大きくなるため、これまで想定していた借入額や返済期間では、会社の資金繰りに余裕がなくなることもあります。
たとえば、設備投資のために3,000万円の融資を検討している場合、「3,000万円借りられるか」だけでなく、現在の金利で借りた場合にどの程度の返済が必要になるのか、その返済を続けても十分な資金を手元に残せるのかを確認することが大切です。
金利が上昇している局面では、必要な資金額だけから借入額を決めるのではなく、利息を含めた返済負担を踏まえて借入額や返済期間を考える必要があります。
変動金利では既存の借入にも影響する可能性がある
すでに事業融資を受けている場合も、契約内容によっては金利上昇の影響を受けます。
固定金利では、契約で定められた固定金利期間中は、市場金利が上昇しても適用される金利は原則として変わりません。一方、変動金利では、基準となる金利の変化に応じて適用金利が見直されるため、金利上昇によって利息負担が増える可能性があります。
ただし、日本銀行が政策金利を引き上げた日に、すべての事業融資の金利が一斉に変わるわけではありません。政策金利の変更を受けて金融機関が基準金利を見直し、その後、融資契約で定められたタイミングで新しい金利が適用されます。そのため、変動金利で借りている場合でも、金利がいつ、どのような条件で見直されるのかは契約によって異なります。
現在借入がある場合は、残高や毎月の返済額だけでなく、固定金利と変動金利のどちらで借りているのか、金利の見直し時期や条件についても確認しておきましょう。
借入が多い会社ほど金利上昇の影響が積み重なりやすい
ひとつの融資だけを見れば、金利が少し上昇しても大きな負担には感じないかもしれません。しかし、複数の借入がある会社では、それぞれの利息負担が増えることで、会社全体から出ていく現金が徐々に増えていきます。
特に、運転資金の借入を継続的に利用している場合や、設備投資などで借入残高が大きい場合には注意が必要です。人件費や原材料費などほかの支出も増えていれば、金利上昇による負担が加わることで、利益が出ていても手元に残る現金が少なくなることがあります。
金利上昇の影響を確認するときは、一つひとつの融資の金利だけを見るのではなく、会社全体で年間どのくらいの利息を支払っているのか、その負担が今後どの程度増える可能性があるのかを確認することが重要です。
事業融資の金利は借入先や会社の状況によって異なる
事業融資の金利は、借入先によって一定の目安があります。ただし、すべての会社が同じ金利で借りられるわけではありません。利用する融資制度や会社の財務状況、借入期間、担保や保証の有無などによって、実際に適用される金利は異なります。
【事業融資の金利の目安】
| 借入先 | 金利の目安 | 金利の考え方・特徴 |
| 日本政策金融公庫 | 年2~5%程度 | 融資制度や返済期間、担保の有無などによって適用金利が異なる。創業者や小規模事業者なども融資の対象としている |
| 銀行 | 年1~4%程度 | 会社の財務状況や信用力、取引実績などによって金利が異なる。信用保証協会の保証付き融資とプロパー融資でも条件が異なる |
| 信用金庫・信用組合 | 年2~6%程度 | 地域の中小企業や個人事業主を主な取引先としており、会社の状況や取引実績などを踏まえて融資条件が決まる |
| ビジネスローン | 年2~15%程度 | 商品によって金利の幅が大きく、銀行や日本政策金融公庫の融資と比べて高い金利が設定される場合がある |
※上記は一般的な目安です。実際の適用金利は金融機関や融資制度、会社の状況、契約条件などによって異なります。
ただし、事業融資では「銀行なら何%」「日本政策金融公庫なら何%」と一律に決まっているわけではありません。同じ金融機関から同じ金額を借りる場合でも、会社の財務状況や返済実績、借入期間、担保や保証の有無、利用する融資制度などによって適用される金利は変わります。
そのため、金利相場は借入先を検討するためのひとつの目安として考え、自社が実際にどのくらいの金利で借りられるのかは金融機関に確認する必要があります。また、金利だけを比較して借入先を決めることにも注意が必要です。金利が低くても希望する金額や返済期間で借りられるとは限らず、融資までにかかる期間や担保・保証の条件なども異なります。
事業融資を検討するときは、金利の数字だけではなく、必要な資金を必要な時期に調達できるか、無理のない返済計画を組めるかまで含めて比較しましょう。
金利が高いからと融資を避けることにもリスクがある
金利が上昇すれば、融資による利息負担は増えます。そのため、できるだけ借入をせず、手元にある資金で事業を進めたいと考えることもあるでしょう。
しかし、融資を受けなければ利息を支払わずに済む一方で、会社の現金を使うことになります。事業に必要な資金をすべて自己資金でまかなうことが、必ずしも会社にとって安全とは限りません。特に、運転資金や設備投資などでまとまった資金が必要になる場合は、「借りた場合の負担」だけでなく「借りなかった場合に何が起こるか」も考えてみることが大切です。
手元資金を使いすぎると資金繰りの余裕がなくなる
融資を利用せず、会社にある現金から設備費や仕入代金などを支払えば、借入金や利息は増えません。しかし、その分だけ手元に残る現金は少なくなります。
事業では、売上があっても入金までに時間がかかることがあります。その間にも給与や家賃、仕入代金、外注費などの支払いは発生します。さらに、取引先からの入金が遅れたり、想定外の修繕費が発生したりすることもあります。手元資金に余裕がなければ、こうした予定外の支出にも対応しにくくなります。
「借金を増やさないこと」だけを優先するのではなく、事業を続けるために必要な現金をどの程度残しておくのかも含めて判断する必要があります。
融資を受けるか判断するときは、利息負担だけでなく、事業を続けるためにどの程度の運転資金を手元に残しておく必要があるのかも確認しましょう。運転資金の目安は「運転資金の目安は月商何ヶ月分?自社に必要な金額の考え方を解説」で紹介しています。
必要な投資を先送りすると事業機会を逃すことがある
金利が高い時期を避けるために、設備投資や採用、新しい事業への投資を先送りする方法もあります。
もちろん、急ぐ必要のない投資であれば、時期を見直すことも選択肢のひとつです。一方で、必要な設備を導入できず生産量を増やせない、人材を採用できず新しい仕事を受けられないといった状況では、投資を見送ることで得られたはずの売上や利益を逃す可能性があります。
たとえば、融資によって年間30万円の利息負担が増えるとしても、その資金を使った設備投資によって年間300万円の利益を生み出せるのであれば、利息の金額だけを見て融資を避けることが会社にとって有利とは限りません。
融資を検討するときは、支払う利息だけではなく、その資金を使うことでどのような売上や利益につながるのか、投資を見送った場合にはどのような機会を失うのかまで考えることが大切です。
金利上昇時代の事業融資は「何のために借りるか」で考える
金利が上昇しているときに、少しでも低い金利で利用できる金融機関や融資制度を比較することは、利息負担を抑えるために大切です。
一方で、金利の低さだけを基準にすると、自社に必要な金額を調達できるのか、希望する時期に融資を受けられるのか、無理のない返済期間を設定できるのかといった条件を見落としてしまう可能性があります。
事業融資を検討するときは、金利もひとつの条件として比較しながら、自社が必要とする資金をどのような条件で調達できるのかを確認することが大切です。
また、「今は金利が高いから、もう少し下がってから借りよう」と考えることもあるでしょう。しかし、今後金利がいつ下がるのかを正確に予測することはできません。その間にも、設備投資や採用、仕入れなど、会社にとって資金が必要になるタイミングは訪れます。
金利の動きだけを見て借りる時期を決めるのではなく、「何のために資金が必要なのか」「いつまでに必要なのか」を整理したうえで、現在の金利を前提に借入額や返済計画を考えていきましょう。